目に見える姿形より大切なもの
郡山から晴天の猪苗代湖を抜けて会津盆地に到着すると、雲が低く垂れ込めていましたが、伊佐須美神社に近づくにつれて薄日が差してきて、本殿で参拝している間に雲は消えて、澄んだ青空が広がってきました。
会津の総鎮守であり、八方除東北総鎮護の伊佐須美神社。境内の入口で、鮮やかな赤色をした大きな鳥居が迎えてくれます。その先にまっすぐに延びる参道は、奥に建つ楼門まで見通せます。
楼門まで来ると、社殿の全景が見えてきます。社殿はコンパクトな造りで、ここはそうしたお社なのだと思ったのですが、もともとの本殿は、2008年10月に火災で焼失していて、現在の社殿は仮殿だそうです。社殿は御祭神を祀る場所ではありますが、社殿が焼失したとしても、御祭神は変わらずにこの地におられて、ここで暮らす人々を変わらずに見守り続けてくださっています。
私たちは、荘厳な造りや社殿の歴史に目が行きがちで、そこに趣や有り難みを感じることもありますが、社殿は傷みが進めば建て替えますし、場合によっては火災で焼失することもあるでしょう。目に見えているものがすべてではない、ということを改めて思い起こさせてくれた気がしました。
左右参道の末社は落ち着いた雰囲気
参道は正面のほか、社殿の左右にも延びていて、異なった表情を見せてくれています。左右の参道には、途中に境内社が静かに佇んでいました。
すぐ近くを流れる宮川の川沿いの道から、まっすぐに社殿に向かって延びる参道は、人の手が入っていない社叢に面しており、舗装されていないこともあって、自然の雰囲気が味わえます。途中には会津大国魂神社が鎮座しています。
街道側に延びる参道はクランク状(桝形)になっていて、白山神社が佇む場所は陽が射し込み、鳥のさえずりが心地よかったです。
境内と道を一本隔てた向かいに外苑のあやめ苑が広がっていて、参拝者の駐車場がその一角にあるため、境内を訪れる人はすぐ目の前の正面参道を利用することから、左右の参道はひっそりしているものの、その分、御神氣をよりはっきりと感じられました。
参拝後は、あやめ苑を散策しました。季節的にあやめは咲いていませんが、穏やかな秋の陽が降り注ぐ苑内に配された池には、鯉やカモのほか人馴れした白鳥までいて、参拝を終えてホッとした気持ちを優しく包んでくれました。